ショートスリーパーを目指した1年後、僕は睡眠を調べることにした
この時期になると、臨床リウマチ学会の抄録づくりに向けて、夜の時間が少しずつ持っていかれる。
今年は宮崎で開催か。去年の長崎が、もうだいぶ懐かしい。
そう思いながら、今年も例にもれず、夜なべをしている。
診療を終え、家のことを終え、ようやく静かになった頃に、僕はRという統計ソフトを立ち上げる。Rという名前は短くて潔いが、こちらの理解はいつも長く遠回りである。久しぶりのご挨拶がてら、使おうとするプロンプトを調べながら、コードの試し打ちから始める。同時に、先行研究を探し、並べる。並べたそばから、さばき、読みほどく。論文を読んでいるつもりが、気づけば別の論文に移り、その参考文献からさらに別の論文へ進んでいる。机の上には、読んだもの、読んだつもりのもの、これから読むべきものが積み重なっていく。紙ではないのに、なぜか重い。
そんな夜に、ふと思う。僕はいま、睡眠を「削り」ながら、患者さんの睡眠について考えている。なかなか矛盾しているじゃないか。
今回、睡眠をテーマにしたきっかけは、去年の7月に受講した話題のショートスリーパー講座だった。1か月間、食事を整え、運動をし、マインドを変える。特別な魔法はなかった。ただ、当たり前のことを、当たり前より少し真面目にやる講座だった。当時は、睡眠時間を3時間まで縮めることができた。案外いけるものだなと思った。けれど、1年たった今の僕はどうかというと、スポットで3時間でもいけなくはないが、4時間30分くらいは眠るようにしている。
ショートスリーパーを目指した結果、むしろ眠るようになった。
少しおかしな話だ。ただ、眠らなければいけない、という思い込みは、いい意味でなくなった。反対に、睡眠より先に削るべきものが、生活の中にはまだたくさんあるのではないかと思うようになった。なんとなく見てしまうスマートフォン。終わったことを何度も考える時間。やらなくてもいいのに、つい抱え込んでしまう作業。そういうものを残したまま、まず睡眠を「削る」のは、少し順番が違うのかもしれない。
一方で、短い睡眠にかなり真面目に挑戦したことで、入眠までの時間は大幅に減った。布団に入ってから、あれこれ考える時間が短くなった。疲れ切ることは、大事なのだと思う。もちろん、ただ消耗するという意味ではない。体を動かし、頭を使い、一日をちゃんと使い切る。そうすると、夜になったとき、体が自然と眠る方向へ向かっていく。
そして今年、夜なべをしながら取り組んでいるテーマが、睡眠と関節リウマチだった。痛みがあると眠りにくい。眠れないと疲れが取れにくい。疲れが残ると、痛みやこわばりをより強く感じる。睡眠とリウマチは深く関係しているだろうけれど、現時点でどんな結論が出せるだろうか。ショートスリーパーになりたいと思って始まった興味は、1年たって、睡眠を「削る」話ではなくなっていった。今回の研究では、睡眠と関節リウマチの関係について、文献をもとに少し整理してみようと思う。
抄録締め切りまで、あと1か月。
1年前、ショートスリーパー講座を受けながら、短い眠りで一日を乗りこなそうとしていた頃の自分に思いをはせる。
あの頃の不思議な高揚感に、胸の奥を少しだけきゅっとさせながら、今日も夜なべをしている。
