トレーニング器具を片付けて、先輩が増えた話 ~新しい風がみんなの立ち位置を前にずらした
1月19日から、新しい医療事務スタッフが加わった。
20歳。新卒。
年齢だけを聞くと、一瞬、頭の中で計算が始まる。
僕よりも、娘のほうがずっと近い。
いや、「近い」というより、同じ時代の空気を吸っている感じがする。
彼女は元気がいい。
患者さんを呼ぶその声に、余計な装飾がない。
声がまっすぐで、よく通る。
そのテンポが、クリニックの空気を一段階だけ前に進める。
新しい人が入ると、職場は少しざわつく。
それは決して悪い意味じゃない。
机の配置を変えたときみたいに、
「ここ、こうだったっけ?」と、無意識に確認が入る感じだ。
彼女が加わり、クリニックのスタッフは9人になった。
開院した頃は5人だったことを思うと、
いつの間にか、ほぼ倍の人数で患者さんを迎えていることになる。
不思議なもので、人数が増えたからか、
これまでのスタッフが、少しずつ先輩の顔つきになってきた。
誰かを教える声の調子や、
立っているときの背中が、前よりも落ち着いて見える。
きっと、いい風がふいているのだと思う。
彼女は、まだこの場所の「普通」を知らない。
だからこそ、こちらの「当たり前」を軽々と飛び越えてくる。
それが、新しい風なんだと思う。
ミニキッチンのスペースが、少しだけ手狭になった。
そこで、これまで場所を取っていた
僕のトレーニング器具を解体して、片づけた。
たいした決断じゃない。
でも、そのほうが、この場所はきっと使いやすくなる。
僕は彼女の背中を見て、
ほんの一瞬だけ、自分の娘の未来を想像する。
娘も、いつか誰かの職場に、
こんなふうに風を運ぶのだろうか、と。
クリニックは、来週からもいつも通り診療をしている。
でも、いつも通りの中に、
確実にひとつ、新しい音が混じった。
それだけで、この1月は、
少しだけ特別になった気がしている。
