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自動販売機の前で、小銭を何度入れてもはじかれて立ち尽くす人間

[2025.09.06]

土曜日の朝、診察室の窓の外はまだ暗くて、僕はiPadの画面を前にひとり途方に暮れていた。
夜、リクルート社から「Air waitのプラン変更準備が整いました」というメールが届いた。メールの文面は、どこかそっけないけれど、僕は、何かひとつ段階を上がった気持ちになり、うっすらと嬉しくなっていた。

思えば1年前にAir waitを導入してから、待合室の風景はすっかり変わった。
以前は受付を終えた患者さんが、落ち着きなく時計をのぞき、時に受付に「あとどれくらいですか?」と問いかけていた。
最近は静かに雑誌をめくったり、眠そうに目を閉じて待つ人が多い。
その変化を見たとき、この仕組みは意味があると感じた。

ただ、隔離診察室ではAir waitを使っていなかった。
隔離部屋がいっぱいだと、「ご自宅で待っていてください」と伝えたあとに、思いのほか時間が過ぎてしまい、「忘れられていないですよね?」と尋ねられたことがある。
もちろん忘れるはずはないのだけれど、熱を出してつらい思いをしている患者さんにしてみれば、そんなに待たされたら心配でしかたない。

だからこそ、今回のプラン変更には期待していた。
通常外来と発熱外来で番号を分ければ、「いつ呼ばれるのかわからない」という種類の不安からは、もう少し解放されるはずだと思った。

ところが現実はうまくいかない。
僕が管理画面で設定をはじめるやいなや、画面がよくわからない画面でロックされてしまった。
ログアウトしてログインしてみても、アプリを削除して再インストールしても変わらない。
受付処理すらできなくなってしまった。
2時間格闘しているうちに、暗かった空がいつのまにか明るくなっていた。
僕は自動販売機の前で、小銭を何度入れてもはじかれて立ち尽くす人間に近かった。

土曜日はサポートに電話もできない。月曜から金曜の9時から19時だけ。もちろんチャットもだめ。
世の中のシステムは、なぜか僕の孤独な土曜の朝に冷たく背を向けるようにできている。

仕方なく冷水シャワーを浴びて、紺のスクラブに袖を通し、朝礼を終えて、もう一度iPadを開いてみた。
すると、まるで何事もなかったかのように受付画面が戻っていた。奇跡のようだった。

そして、2週連続の土曜診療で疲れているだろうスタッフとAir waitは、そんな顔をみせずに淡々と仕事をこなしてくれた。
結局、から騒ぎをしていたのは僕だけだった。
水曜日の午後に、サポートに電話をつなぎながら、ひとつずつ丁寧に進めていこう。

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