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マンカラのある生活。

[2025.04.03]

2日前から、夜に妻とふたりで“マンカラ”というゲームをやっている。

名前だけ聞くと、ちょっと魔法っぽい。あるいは、民族楽器か何かのようでもある。でも中身はれっきとしたボードゲームで、木の盤にくぼみがいくつもあって、そこに小石みたいな駒を撒きながら、自分の陣地に集めていくという、昔からある遊びらしい。

こどもを寝かしつけて、一息ついた夜のリビングで、湯気の立つ湯呑みを前に向かい合って、淡々と石を撒く。
マンカラ。名前の響きがすでに少し不穏で、魅力的だ。
1日2戦だけ。これも最初に決めたルールだ。「やりすぎると、なんか生活が持ってかれそうだから」。

今日は1勝1敗。
ちょうどよかった。勝っても負けても、どっちでも楽しい。

妻は、意外とこういう勝負事に強くて、石を置く手つきもなんだか洗練されてきてる気がする。対してこっちはまだ、石の撒き方もぎこちない。でも、ぎこちないまま続けていくのも悪くない。

たった2日、されど2日。
このゲームを通して、知らなかった妻の一面が見えたり、自分の負けず嫌いが顔を出したりする。

寝静まった家の中、ぽつんと灯るダイニングの灯りの下で、僕たちは石を数えている。
静かな戦いだ。だけど、こういう時間こそが、生活の輪郭をくっきりさせてくれるのかもしれない。

「また明日ね」と言って、僕は立ち上がる。時計はもうすぐ22時30分をまわる。

静かな勝負のあと、静かな仕事に向かう。その切り替えの境目に、マンカラという名のちいさな儀式ができた。

生活は、たぶんこういうものでできている。

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