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まだ行ってもいない星空の話

[2025.07.26]

想像してみる。
今日の夜、満天の星空を。

八ヶ岳の空は深く、夜になると天井がないみたいになる。
ふだん僕たちは、屋根と天井とWi-Fiのある空間で生きている。
明かりを消した部屋でも、星は見えない。
天井に貼った蓄光シールがぽつぽつ光るだけだ。
それでも十分だった。

だけど、山に星を見に行こうという話になった。
きっかけは、息子のチャレンジの付録に望遠鏡が届いたことだった。
「土星の輪っか見えるかな」なんて言いながら、
曇った空を見上げて残念そうな顔をしていた。

夏の八ヶ岳。
天然のプラネタリウム。
なんて気の利いた言葉なんだろうと思いつつ、
それを声に出すと、なんだか途端にチープになりそうで、言えなかった。

僕たちは、とてもインドアな生活をしている。
太陽の日差しには弱く、山道は歩かず、虫にも弱い。
テントはもちろん張れないし、そもそも持っていない。
だから、アウトドア風の体験にはルールがある。
「泊まれる場所がある」「BBQは用意されている」「トイレがきれい」
この3条件を満たすため、探した結果コテージをみつけたんだ。
火を囲むのも、できればマニュアルつきでお願いしたい。

空に星が溢れていて、自分の小ささが心地よくなる。
スマホを見ても、圏外。
思考が強制的に、空に向かう。

星はただそこにあって、
僕たちはただ見上げるだけでいい。
火をうまく起こせなくても、
焦げたソーセージしか焼けなくても、
それでも夜空は優しくて、
だからこそ、また来たいと思うのかもしれない。

まだ行ってもいない天然のプラネタリウムに思いをはせる、薄明かりの早朝。
動画制作と、スライド作成と、懸垂の合間。
ほんのすこしだけ、静かに目を閉じた。

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