のばなぶろぐ
言葉にするには、少しばかり間に合わなかったことや、
ただ、そこにあっただけの景色のことを、
遅れながら、思い出しながら、書いています。
家族のこと。
クリニックのこと。
誰かの顔や、名前もない感情のことも。
決まった形も、特別な意味もないけれど、
それでも、どこかでつながっている気がして、
ときどき、こうして綴っています。
これは、院長による、そんな日々の記録です。
まだ行ってもいない星空の話
(2025.07.26更新)
想像してみる。
今日の夜、満天の星空を。
八ヶ岳の空は深く、夜になると天井がないみたいになる。
ふだん僕たちは、屋根と天井とWi-Fiのある空間で生きている。
明かりを消した部屋でも、星は見え… ▼続きを読む
思い出のレストランは却下されて、向かった先はベトナムだった ~サプライズの意味を知っているのだろうか
(2025.07.21更新)
「今日は何の日だかわかる?」と、妻が聞いてきた。
答えはすぐにわかっていた。なぜなら、毎年この日に確認されているからだ。
もはや恒例行事のような問答になっている。けれど、たぶんそれを「恒例行事」と… ▼続きを読む
くちパク医師の亡霊
(2025.06.21更新)
今日の夕方のことだった。
一人の患者さんが、診察室の扉を閉めかけたところで、ふと立ち止まり、
少しだけ声のトーンを下げて、そっと言った。
「先生、あの……待合室の動画、字幕がないと、音声もないし… ▼続きを読む
動画の中の指先のメロディと、背中に届いた小さな手
(2025.06.16更新)
梅雨らしい、しっとりと静かな日曜日。ゆっくりと目覚めた朝、隣には奥さんだけ。気づけば、子どもたちはすでにリビングで『名探偵コナン』の世界に夢中になっていた。
今日は本来なら、こどもたちのピアノの発表… ▼続きを読む
来た順番にもさよならを言わない
(2025.05.24更新)
午後の診療を、少しだけ変えることにしました。
2025年5月26日から、のばなクリニックでは平日午後の診療を予約制にします。
診療開始は午後1時45分から。この時間帯だけ、前もって「順番」を決めて… ▼続きを読む
たとえば、そんな音があったかもしれない
(2025.04.24更新)
クリニックの待合室にある自動販売機は、たいてい黙っている。
でも、ときどき、誰かの指先に反応して、短く「ガコン」と音を立てる。
静かな待合室に響くその音は、何かが終わる音にも聞こえるし、何かが… ▼続きを読む
釣りバカ日誌 〜海がまだ、よそよそしい。
(2025.04.20更新)
今朝は、誰よりも早く目覚めた……わけではなかった。
正直に言えば、目覚ましが鳴るより先に、長男の「起きて!釣り行くよ!」という声で叩き起こされた。まだ薄暗い部屋の中、長男の声だけがやけに透き通って… ▼続きを読む
桂馬の跳ねる音が聞こえる
(2025.04.16更新)
ぼくは自分の父親に将棋で勝ったことがない。正確に言えば、勝とうとしたこともほとんどない。父との将棋では、いつも盤上には静かな風が吹いていて、こちらが何か駒を動かすたびに、まるでその風に押し戻されるよう… ▼続きを読む
うすい光のなかで
(2025.04.12更新)
3月の第5土曜日、4月の第1土曜日と2週続けて土曜日に診療があった。
それは、ただのカレンダー上の事実にすぎない。数字としては「+1日」だ。
でも、実際にその中で動いていた人間の体と心は、たぶんも… ▼続きを読む
余韻
(2025.04.06更新)
診療が終わったのは、14時を少し過ぎたころだった。
西公園で桜祭りをやっている。そんな話を昼に耳にした。
なんとなく屋台くらいはあるんじゃないかと期待して、終わってすぐに家族を呼んで、歩いて向か… ▼続きを読む